私たち人間の腸内には多くの細菌が住んでいますが、その大まかな区別が善玉菌と日和見菌と悪玉菌の3種類に分けられます。
文字から見ると、善玉菌は良い菌・悪玉菌は悪い菌・日和見菌は有益な方に付く菌で、善玉菌は身体に有益をもたらしてくれる菌、悪玉菌は腸内環境を悪化させる有害な菌という感じでしょうか。
でも、文字だけで判断するのはちょっと待ってください。
実は、私達にとって悪玉菌もなくてはならない大切な存在なのです。
なぜ悪玉菌が人間の常在菌なの?
確かに、悪い菌と聞けば「いらない・排除したい」と思うのは当然のことですが、腸活と聞くと善玉菌:悪玉菌:日和見菌は2:1:7が理想と言われます。
では、なぜ悪い菌が昔から私たち人間の常在菌になっているのか?不思議ではないですか?
悪い菌なら、1割も1ミリもいらないはずです。
人類誕生と共に、身体の機能や役割も進化しているはずなので、細菌も善玉菌だけでいいのではないか?と思いますよね?
約5000年以上前のミイラから現在の最新技術によって腸内細菌叢を調べた結果、ウェルシュ菌が発見されています。
悪玉菌の代表格でもあるウェルシュ菌は毒を出す菌なのに、腸内細菌叢のメンバーとして約5000年以上前から人間の腸内に生息していたのです!
いわゆる腸内細菌叢の中の大御所と言ってもいいほど、私たちの生命と共存しているのです。
ウェルシュ菌と言えば、食中毒や腸疾患を引き起こす原因にもなる菌ですが、健康な人間の腸内細菌叢の一部であることも確かです。
ということは、悪玉菌は毒性ばかり出しているのではなく、ほかの役割もあるから人間とは切っても切れない縁があるということに繋がります。
悪玉菌も腸内細菌叢では大切な存在
消化という過程の中で、例えば肉などの動物性たんぱく質は悪玉菌が最終的に処理をして消化されます。
私はビーガンだから悪玉菌は必要ない!という人もいるかもしれませんが・・、大腸に住んでいる悪玉菌は最終処理をしてくれる最後の要という立ち位置になります。
また、悪玉菌が産出する代謝物質は単体ならば毒なのかもしれません。
でも、悪玉菌の毒と言われる代謝物質を善玉菌や日和見菌が利用して、結果的には有益な物質になっていることもわかってきています。
これは、その他の腸内細菌が悪玉菌の恩恵を頂きながら生活しているということなので、腸内細菌叢には悪玉菌もメンバーの一部として生存しなければいけないということになります。
また、腸内は細菌にとって集合住宅のような環境で様々な菌が存在し、新入りの菌や出ていく菌など入れ替わりもあります。
そんな時、超悪の菌がやってきたら環境も一気に最悪ムードに変わってしまいますよね。
そうならないためにも、悪い侵入菌を防御する防犯対策に悪玉菌が一役買っていることもあります。
このように、悪玉菌は毒という代謝物を出す悪い菌だといっても、様々な形に変化して、私たち人間にとっては結果的に「良いもの」となって循環しているということも最新の研究で解明されつつあります。
腸内細菌叢の悪玉菌の立場
ウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌・大腸菌たちは、私たち人間が悪玉菌と名付けているだけで、腸内細菌叢の中では大切な存在ともいえる菌たちです。
ただ腸内細菌叢で、これらの菌が多くなると厄介になるので、増やさず有益な数を一定に保ちながら共同生活を送っています。
先にもお伝えしましたが、悪玉菌の代謝物を利用して生活している善玉菌や日和見菌もいるので、いなくなっては困る存在なのですが、多すぎても厄介な存在になります。
善玉菌を優等生グループ・悪玉菌を不良グループ・日和見菌を世間一般でいう普通のグループに例えると、
・優等生グループが多い街は環境整備が整ってセレブ的な街
・不良グループが多い街は治安が悪く住みにくい街
・普通グループが多い街は一般的なベッドタウン的な街
という感じでしょう。
私たち人間の生きている環境と腸内細菌叢の環境は同じで、このようにみると、どの菌が多くいた方が良いのかが分かってきます。
不良グループも多すぎると厄介ですが、ある程度いてくれた方が頼もしい存在になることもあります。